6人が本棚に入れています
本棚に追加
/172ページ
「そうなんですか?」
わたしにそう訊ねたのは、トレーに載りきらないほど小鉢を並べたあさみっちこと、浅見円香さん。部署は違うけれど、とよっちとは同期入社で、そのご縁もあって一緒にお昼ご飯を食べている。
色白でお人形さんのような面立ちをしているが、顔に似合わずかなりの食欲の持ち主。というか、ストレスがたまると食欲が止まらなくなるらしい。
2人のやや熱い眼差しにわたしはヒレカツをお皿の上に戻した。そんなに見つめられると、食べ辛いんですけど……。
「そんな話は特に聞いてないですけど……。でもま、3月も6月も一緒ですよ」
「え~、三島さんがいなくなるのは寂しいです。何とかならないんですかね?」
「こればっかりは雇われの身ですから」
とよっちはもどかしそうに目をくいしばった。そういうところ、本当に可愛い人だなって思う。年はひとつしか変わらないけど。ちなみにわたしの方が上だけど。
「もしそうなったらその時はその時で。お2人にもお知らせしますね」
などと言ってみましたが……ーー
GMが言っているくらいだからたぶん事実なんだろうな。
推測するに、わたしの上司である岩原さんはただ言い出せないだけで、すでに決まったことなんだと思う。うちのGMは男性社員には厳しいが女子社員には弱い。
それなら、岩原さんが話せるようにわたしの方から切り出さねばなるまい。
きっと岩原さんも苦しんでいることだろうし。
そう考えていると、その機会は存外早くにやってきた。
最初のコメントを投稿しよう!