8.伝えたい気持ち

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「先、輩……何でここに……?」 「思ったより早く仕事が終わったから車で志衣を迎えに来たんだ。メッセージ入れたけど気付かなかったか?」 「あ……ほんとだ」 スマホを見ると、確かに先輩からメッセージが届いていた。 俺達のそんなやり取りを見ながら、莉真さんが挑発的な声を上げる。 「誰かと思えば志衣君の恋人サンじゃない。急に現れてお説教? あなたのことはSNSに顔出ししなかったんだから、逆に感謝してほしいくらいよ」 どこまでも自分が優位だと思っているらしい彼女に対し、先輩は怒号を浴びせるわけでも、情けなく謝るわけでもなくーーただ無言のまま、彼女のことを鋭く睨んだ。 「……っ」 強気だった彼女が、肩をびくっと分かりやすく震わせた。恋人の欲目を抜きにしても先輩は美形なので、睨まれるとやけに凄みがある。震えるのも無理はない。 先輩は言った。 「言っておくが、顔なんて隠されなくても俺は全く困らない。だからお前に感謝する筋合いはない」 「こ、困らないならわざわざ私に絡んでこないでよっ」 「俺は困らなくても、志衣を困らせているのが許せないんだ。今すぐあの写真を消せ」 「今更消したって、もう拡散されまくってるわよ。美容師としての仕事も、インフルエンサーとしての仕事も、全部なくなるのも時間の問題なの」 「……インフルエンサーはともかく、志衣の美容師としての仕事は絶対になくならない。志衣はいつも真面目で一生懸命な、立派な美容師だ。あんな写真が出回ったくらいで仕事がなくなることはない」 先輩は真っ直ぐに莉真さんを見つめながら力強くそう言った。
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