8.伝えたい気持ち

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ソファに座ってコーヒーを飲みながら、先輩はそう言ってクスッと笑った。 「そ、そんなことないですよ。俺は元々、SNSへの興味すらほとんどないんですから」 「そうか? 本気でやってみたら案外本物になれる気がするぞ」 「……か、」 「ん?」 「……か、考えておきます。なんて……」 照れ臭さ全開でそう答えると、先輩はまた笑った。 そんな先輩に、俺は言葉をつづける。 「でも俺は、今はインフルエンサーのことよりも、美容師の仕事関係の資格を増やしたいと思っているんです」 「資格?」 「店長が、店を拡大させてネイルサロンを併設する計画を立てているんです。そうなったら従業員も増えるだろうけど、俺もネイリストの資格が取れたら仕事の幅が広がるかなって。自分に出来ることが増えて、店長にも恩返し出来たら、それって最高じゃないですか」 そう伝えると……先輩は「志衣らしいな」と優しい声で答えた。 そしてーー先輩の右手が俺の前髪に触れたかと思うと、額にちゅっと軽くキスを落とされた。 「な、何ですか。急に」 「志衣のそういうところが好きだなと思ったらキスしたくなった」 「もう……」 こっちは恥ずかしいんだから、不意打ちはやめてくれ……。 「あ。またフォロワー増えてる」 スマホを見ながらそう言うと、先輩も俺の手元を覗き込み「本当だ。凄いな」と答える。 ーー大きい数字であるフォロワー数を見ながら、俺は思う。 どんなに多くの人が自分を見ていても、その目を怖がる必要なんてない。何も悪いことはしていないのだから。 先輩(はつこい)と再会出来て本当に良かった。たくさんの大切なことに気付けたから。 「先輩。これからもずっと一緒にいましょうね」 「どうした? 急に」 「たまには甘えてもいいでしょ?」 「もちろん」 ……あなたは俺にとって本当に大切な、初恋の相手です。 これからも、どうぞよろしくお願いしますーー。 完 番外編に続く
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