1.ほろ苦い思い出

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「志衣君、お疲れ様〜」 優しくそう声を掛けてくれたのは、店長の巻田(まきた) (あずさ)さん。 梓さんは俺の十歳年上だが、流行に人一倍敏感で、いつもはつらつとした美人女性。怒ると怖いが、美容師としての腕は本当に尊敬している。 ここ美容室ファミーユは、この梓さんが店長兼オーナーを務める、個人経営の美容室。 従業員は、梓さんを含めて四名。 俺ーー坂野(さかの) 志衣も、この店で働く美容師だ。 高校卒業後、地元から東京の美容専門学校に入学。美容師免許を取得後、そのまま東京で念願の美容師となった。 免許取得後は、とある大型店に就職して二年ほど働いていたのだが……色々あって、退職。 いったん無職になったのち、この店で働かせてもらうようになってから早二年。 美容師としてはまだまだ勉強中の、現在二十五歳である。
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