1.ほろ苦い思い出

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「莉真さん、これからパーティーに行くって言ってたのが聞こえましたけど、何のパーティーですか? 結婚式?」 身の回りの後片付けをしながら、一歳歳下の後輩である裕斗(ゆうと)君が俺にそう尋ねる。 小柄で無邪気な裕斗君はどこか小動物っぽく、梓さんからはよく〝いじられキャラ〟と言われている。 「実家の会社関係のパーティーらしいよ。創立記念パーティーって言ってたな」 「へえー。莉真さん、社長令嬢ですもんね! でも、そんな凄い人が、何でカットもカラーもセットも毎回うちみたいな冴えない美容院に来るんですか?」 裕斗君の言葉に、梓さんがすかさず「冴えないって言うんじゃないわよ。リーズナブルって言いなさい」と口を挟む。 「す、すんません。でも、社長令嬢の方ならもっと大型の高級サロンとか行きそうなのになと思いまして」 「そりゃあ、志衣君に会いたくて来てるに決まってるじゃない。何と言っても志衣君は、うちの店が誇る有名人(インフルエンサー)なんだから!」
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