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「それにしても、先輩も東京にいるなんて思いませんでした」
コーヒーを一口含む先輩に、俺はそう言った。
「もしかしたら、今までもどこかですれ違っていたかもしれませんね」
「そうだな。でも俺が東京に来たのは一年前くらい前かな。それまでは関西の支店で働いてたんだけど、去年から東京に異動になったんだ」
「そうなんですか。部長……なんですよね? 年齢ほとんど変わらないのに出世していて凄いって、さっき暖也が言ってました」
「若くて出世する奴なんて今時たくさんいるよ。それより志衣の方が凄いだろ。有名人なんだから」
と、先輩からストレートにそう褒めてもらったけれど……
「い、いや。俺なんて……」
思わず、言葉に詰まってしまった。
インフルエンサーに関しては、しょせん偽物。そしてそれ以前にーーインフルエンサーと呼ばれるようになる前の、自分のとある〝過去〟を思い出したからだ。
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