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「はい。二年からはサボるのをやめて、ちゃんと真面目にやっていましたよ。あ、友達も出来ました」
俺が笑いながらそう答えると、先輩はーー。
「そうか。良かった。偉いじゃん」
そう言ってまた、しかしさっきよりも分かりやすく笑った。
心臓が、ドキッと飛び跳ねる。
……俺、先輩のこの笑顔が今でも好きみたいだ……。
いやいや、こんな気持ちになったらダメだ。
仮にも有名人である自分が、男同士なんてリスクのある恋愛をするわけにはいかない。世間にバレたら、少なからず騒ぎになる。
というか、そもそも先輩は今の俺のことなんて何とも思っていないだろう。別れてから、もう十年も経っているのだから。
「志衣?」
「あっ、その……」
それなのにーー。
「先輩は、今は恋人は……いますか?」
何で俺は、こんなことを聞いてしまったのだろう。
俺の質問を受けた先輩は、優しく笑いながらこう答える。
「いるよ」
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