1.ほろ苦い思い出

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『これは、うちの美容室を宣伝するチャンスよ!』 梓さんはそう言って、俺のSNSアカウントをすかさず開設した。 そのアカウントは、主に若い女性達の間でたちまち噂となり、フォロワーは急増ーーいつの間にかインフルエンサーと呼ばれる存在になってしまった。 ……ただし、SNSの更新も専ら梓さんだ。世間には内緒にしているが、俺自身は一度も更新したことがない。 つまり俺は、しょせん偽物のインフルエンサー。 俺が偽物だと知るのは、この美容室で働く従業員のみだ。 世間を騙しているようで少し心苦しくはあるが……梓さん曰く、俺目当てのお客様が増えたお陰で現在、店は以前より繁盛しているらしい……。
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