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1.ほろ苦い思い出
東京都某区の、とある美容室にてーー。
俺は二面式鏡を開き、目の前に座る女性の後ろ姿に、鏡を当てた。
「完成。どうかな?」
そう尋ねると、正面の鏡越しに自分の後ろ姿を確認した莉真さんは、満足気に笑ってくれた。
「可愛い! 志衣君、いつもありがとう! これでパーティー行けるわ!」
「良かったです。楽しんできてくださいね」
そう答えてから、少し高めに上げていたセットチェアの高さを元に戻すと、彼女はゆっくりと立ち上がった。
会計後、店から出ていく莉真さんを見送る。
ちょうど閉店の時刻だったので、莉真さんの姿が完全に見えなくなってから俺は入り口にぶら下がったプレートを〝OPEN〟から〝CLOSE〟へと反転させた。
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