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「お前、誰……いや、どっかで見覚えがある気もするぞ」
年は不破とあまり変わらないくらい、少し丸い輪郭と体以外は特にこれといった特徴もない人畜無害そうな普通の女だが、不破にはどこかで見覚えがあった。
「昨日の飲み会でご一緒させて頂いた、小笠原千冬(おがさわらちふゆ)です。一応、アナウンサーをしているのですがスポーツ担当ではないので不破さんにお会いするのは昨日が初めてでしたね」
丁寧に挨拶されて、不破はようやく目の前の女のことを思い出す。
昨夜の飲み会は、地元のテレビ局が主催したもので取材と交流を兼ねたものだった。北海道ベアーズは地域密着の球団で、道民からの支持率も高く番組でベアーズを取り上げれば高視聴率が期待できる。そのため、人気選手とのパイプ作りにテレビ局は余念がない。
その席には女子アナウンサーも数名いて、不破はいつものようにみんなにちやほやされていた。だが、そんな中で食事に夢中だったのが、この小笠原千冬だった。
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