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「あぁ、そういやいたな」
不破は積極的に話し掛けてこない千冬に絡んだことをぼんやりと思い出す。「アナウンサーらしくない」「コネか」「顔が丸いな」など散々な言葉を不破は千冬に浴びせた。しかし、千冬はお得意様相手だから我慢しているといった態度ではなく、不破の発言を本気で笑いながら受け流した。そしてさらに美味しいからと料理を勧めてきて、その気安さから不破はつい最近の悩みについて溢してしまった。
そして、どうやら誰にも言えなかったことを話してしまった流れで、一緒に帰ってきてしまったらしい。
「はい、美味しいご飯を食べさせろということで、ご飯を用意したんですがすぐ眠ってしまったので、今度こそちゃんとご飯にしますか」
千冬の話から、昨夜は何事もなかったことがわかる。見境がないのは褒められたことではないが、これまでの所業から考えると情けないなと不破は自嘲気味に息を吐く。
「飯か……」
「やはり、食べる気がしませんか」
昨夜、不破が千冬に語った悩みは食欲不振。
開幕から少し体調に違和感を覚えていた不破だが、初めは飲みすぎかと思いお酒を控えた。だが、それでも疲れがとれない日々が続く。
これは所謂スランプなのではないか。
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