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そう思い立ったが確証はない。なにせ、不破はこれまで大きな壁にぶつかったことなど一度もなかったからだ。
些細な不調は、不破に思うように打てなくなるかもしれないという不安を与えた。そうすれば、ストレスが溜まり徐々に食欲がなくなったり眠りが浅くなったりしてきた。これがまたさらなる不調に繋がり、悪循環が繰り返される。幸いなことに、周りはまだ不破の変化に気付いていない。
「いや、もらう」
「そうですか。じゃあ、こちらへどうぞ」
のっそりと布団から起き上がった不破は自分がずいぶんと必死なことに気付く。
周囲にこの不調が露呈する前になんとかしなくてはいけない。焦って、藁をも掴む気持ちで、よく知りもしないアナウンサーの自宅まで押し掛けていることに不破は大きなため息をついてしまう。
「広い家だな、家族と一緒に住んでいるのか」
「祖父母が住んでいた家を貰い受けて一人暮らしです。少し古いですが、良い家でしょう」
襖を開けた先には広々とした居間があり、その先の台所から千冬の声が聞こえてくる。どこか懐かしさを感じさせる部屋を見回しながら、不破は大きめな丸いちゃぶ台の前に座る。
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