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「……リュカ、物語の続きはお前に任せられんか? わしはもう歳を取りすぎた。物語を創るのは骨が折れる。オリヴィアと息子と一緒にゆっくり眠りたいんじゃ」
「えっ? 任せるって、俺に?」
「ああ、お前さんのたくましい想像力なら、いくらでも創り出せるじゃろ?」
驚いて隣に顔を向けると、ライラも大きな瞳をぱちくりとしていた。
「……もし爺さんがいなくなっても、俺はこのままここにいられるわけ? ライラたちも消えたりしない?」
「ああ、お前がこの物語を語り続けられるうちは、消えたりしないだろうさ」
するとライラが慌てて俺の袖を引っ張った。
「ちょ、ちょっと待って、リュカ! 本当にそれでいいの? ……リュカには向こうに家族がいるでしょう?」
「あー別にいいんじゃない? 俺ひとりいなくなっても娼館としては困らないだろうし」
「でも家に帰って来なかったらみんな心配するでしょ!」
すると言い合う俺たちに、爺さんは優しい目を向けた。
「じゃあわしがあの世に行く前に、置き手紙を残してきてやろう。マリエルたちには何と伝えればいい?」
ライラの肩を抱き寄せ、爺さんに言う。
「それじゃあ――『俺は世界一可愛い恋人ができて、人生ハッピーエンドだから心配ご無用。クローゼットの奥の板を外すと俺のへそくりが隠してあるから、みんなで旨いものでも食べて』って伝えて。あと最後に、みんな愛してるよ、ってハートマークもつけといて」
「お前さんらしいな」
微笑む爺さんを見て、オリヴィアと小さなリュカも顔を綻ばせる。
――本当にありがとう、リュカ。あなたもどうか、幸せになって。
オリヴィアが俺とライラの頬に口付けを残す。金色の、優しい綿毛のような。
「あなたも、オリヴィア。俺とライラを出会わせてくれて、どうもありがとう」
身を寄せ合う三つの輪郭が、金の光に包まれる。温かい、明るい、幸福の光。
優しいきらめきを残し、天へと昇っていく。
ありがとう、ありがとうリュカ。どうか幸せな物語を。
そして初めて訪れる、静かで穏やかな夜。
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