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「こんなにはっきり光っているのに、どうして誰も気づかないんだろう」
「……光るって、さっきライラが言っていたこと?」
〈物語〉が見える者は夜の中に光って見える――ライラはそう言った。
「君はきっと物語の輪郭を変えることができる人だ。僕らが殺され続ける悪夢のような物語を、終わらせることができる」
「俺がその世界の救世主に?」
「うん。なれるんじゃないかと思う」
そんなふうに持ち上げられると悪い気はしない。だがやはり騙されているのかと疑ってしまう。
「……さっきの残りの質問。どうしてライラの半分は男になったの?」
「それは、僕が男になりたいと願ったから」
ライラはふたたび布団の中に手を引っ込めた。
「男であれば、王に殺されずに済む。だからずっと男だったらよかったのにって思っていた。きっとその願いが、半分に分かれたときに叶ったんだ」
辛い記憶を思い出したのか、ライラの黒い眉が歪む。その表情は、とても嘘をついているようには見えないけれど――
「……証明できる?」
証明?とライラは顔を上げた。
「ライラが〈物語〉の中の人物だっていう証明」
ライラは、うーん、と唸り、口を閉ざした。すると突然、俺の頭を押さえ、自分の額に押しつける。
「……急に何? もういちどキスしてもいいよの合図?」
「バカ、違う。ためしに僕の中の映像を君に送ってみるから。〈見て〉みて。君ならきっと見えると思うから」
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