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「……ホワホワの正体が、あんなにきれいな女の人だったなんて意外だった」
隣で、惚けたようにライラが呟く。
「何言ってるんだい。君の方がずっときれいだよ」
そう言うと、ライラは不審げに眉根を寄せた。
「どうしたの、そのクサい台詞」
「そう言わないとまた怒るくせに」
からかうと勢いよく拳を振り上げる。それを片手で受け止め、もう片方の手でライラの腰を引き寄せた。
「よし。ようやくすべて片付いたから、俺と夜のデートでもする?」
「デート? どこに?」
「アラビアンナイトらしく、空飛ぶ絨毯でも出してみようか?」
そう提案すると、ライラの瞳が大きな宝石のように輝いた。
魔法の絨毯に乗り、王宮を飛び出す。立ち並ぶ尖塔。降り注ぐ月明かり。白亜の宮殿がぼんやり浮かぶ。それを囲むように、星空よりもさらに明るい、色彩あふれる異国の夜景が遥か彼方まで広がっている。
俺の胸にもたれかかりながら、あれ?とライラが呟いた。
「僕、王宮の外に出られたみたい……! いままで一度も出たことがなかったのに」
「ああ、俺が物語を書き換えたから」
はああ、とライラが素っ頓狂な声を出す。
「もうそんなことができるわけ!? 驚くと言うか、感心すると言うか……よく考えたら、リュカがこの世界の支配者になっちゃったってことだよね? それって危険じゃない? 絶対にダークサイドに堕ちないでよね」
「失礼だなぁ。堕ちないよ。ライラがおとなしく俺の言うことを聞いてくれる限りは」
「何それ! 脅迫!」
ライラがきゃらきゃらと楽しげな笑い声を上げる。
絨毯は街を越え、砂漠を越え、夜の海へとたどり着いた。
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