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「ねえ、ライラは女の子のライラの中に戻りたい?」
ふと訊ねると、ライラはすっと口を閉ざした。
「……リュカは、僕が女の子の方がいい?」
「別に、そういう意味じゃないけど」
答えると、ライラは身体の向きを変え、俺の胸に抱きついた。
「僕ね、変なんだ。もともとひとつだったはずなのに、リュカと出会ったのはこっちのライラで、置いてきたライラとは別人みたいなんだ」
俺の胸に顔を押しつけ、気弱な声を出す。
「もし僕が女の子のライラの中に戻ったら、リュカは女の子のライラを好きになる? 本当はそれでいいはずなのに……僕、ちょっとおかしいのかな。どうしてこんなに不安なんだろう」
それを聞いて、思わず吹き出した。
「なぁに、また焼きもち焼いてるの? ライラが、ライラに?」
「笑わないで! こっちは真剣なんだから!」
あまりに可愛いことを言うので笑いが止まらない。ライラは自分がどれほど可愛いか、ちっともわかっていない。
「俺は、ここにいるライラが好き。いまのライラが好きだよ」
その唇に、何度目かわからないキスをする。
「戻らなくていいよ。それでずっと俺のそばにいて」
ライラが俺に飛びつき、顔中にキスの雨を降らす。だがふと重要なことに気づき、そのキスの嵐を何とか押し留めた。
「……ライちゃん、ライちゃん、ごめんちょっと待って! はじめに断っておくけど、俺は人間だから、たぶん普通に歳をとると思うよ」
「うん? それが何?」
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