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「……少し、説明しようか?」
「もちろん。さっきから何が何だかわからなくて頭の中が混乱してる。一からぜんぶ説明してくれない?」
いいよ、と女装少年はふたたび俺の手を取った。ドキンと心臓が跳ね上がる。
――さっきから思ってたんですが、ちょっと距離感おかしくない?
手を繋いだまま、河沿いの遊歩道を歩きはじめる。深夜のせいか、周りには誰ひとりいなかった。
「僕の名前はライラ。君は?」
「リュカだよ」
するとライラはパッと顔を上げた。
「光、から取った名前でしょう? 君にぴったりだね。さっき君が光って見えたから、きっと大丈夫だと思ったんだ」
「光って見えた? 俺の頭が金髪だから?」
繋いでいない方の手で帽子を脱いだ。ライラは笑いながら首を振る。
「〈物語〉が見える者は夜の中に光って見える。この世界に〈物語〉を愛する人は多いけれど、見ることのできる者はそうそういない。ほら、君にはちゃんと僕が見えているでしょう?」
それはまるで謎かけのような言葉だった。
「……あんたは俺をからかっているの?」
「からかってない。信じてるんだ」
そう言いながらライラは、ぐるりと辺りを見渡した。その大きな瞳が闇夜の猫のように光る。
「君は光って目立つから、本当はあまり夜に出歩かない方がいいんだ。奴らに狙われるよ」
「奴ら?」
「〈検閲〉の奴らに」
ライラはふたたびその謎の言葉を口にした。
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