微睡みからの予感

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微睡みからの予感

「おはよう、ナツ。今日も可愛いね」   もぞもぞと布団が動いたと思ったら、コウタがそんな甘い台詞を恥ずかしげもなくボクにくれた。微睡みの中瞼を持ち上げると、優しげな顔がこちらを向いている。    呼ばれた名前とその声に心地よさを感じていると、コウタがボクの頬に触れ、丁寧に撫でてくれる。気持ち良さに再度目を閉じそうになっていた時……今度はボクとコウタの間に、フユの顔が割り込んできた。  そのマズルの長さ、ずるいんだよなあ……。 「ごめんごめん。フユも勿論可愛いよ」  コウタはそう言って笑うと、今度はフユを撫で回している。フユはとても嬉しそうだ。尻尾を大きく振って、喜んでいる。 「そろそろ起きようか。朝ごはんの準備だ」  起き上がり、カーテンを開きリビングへと向かったコウタを、フユは当たり前のように追いかけた。  コウタがいなくなった部屋には朝陽が差し込み、気持ちが良い。    ボクはベッドの上で立ち上がり、前足を遠くに置く。お尻を高く持ち上げ、グググッと体を伸ばしていると、フユがこちらを振り向いてボクに声をかけた。 「ほら、あんたも行くよ」  ボクよりも一回り以上大きな体のフユの尻尾は、右へ左へと忙しなく動く。それを見てボクは反射的にベッドを飛び下りて、ふたりを追いかけた。 「おはようフユ」 「おはようナツ」  フユと朝の挨拶を交わしてから、ボクは丁寧に顔や体を洗う。  フユはこの時間になるといつもボクの周りを歩き、チャンスさえあればお尻の匂いを嗅ぎにくる。終いには、わたしのも嗅ぎなさいよとお尻を押し付けてくるから困ったものだ。  
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