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ああ、そうか。ボクは、失敗しちゃったのか……。プレゼントを渡せなくて、ごめんよコウタ。
────
「ナツ! ナツ!!!」
目を開けると、いつの間にかボクはコウタの腕の中にいた。コウタは、ボクを抱えて座り込み、心配そうにこちらを見つめている。
ふと横を見ると、フユもいる。そして、何故かキャンディまで。
「ボク、死んじゃうのかな? みんな、ごめん。本当にごめんね」
すると、フユが呆れたような顔をして笑っていた。隣のキャンディは、ホッと息をついてその場に腰を下ろした。
「心配しなくても大丈夫さ。あんたは、怪我ひとつしてないよ」
フユの言葉に驚きつつも、確かにどこも痛くはないと気が付く。もうダメだと思っていたのに、何故なのだろうか。フユに続いたのは、キャンディだった。
「車に退かれそうになっていたお前を、俺が助けたのさ」
「ナツのことが心配で、ずっと様子を見ていたみたいだよ」
「なっ。心配したわけじゃ……ま、ギリギリだったが、お前が軽くて良かったぜ。車もスピードを緩めていたようだし、雨も幸いした」
「あんたはただ、驚いて少しの間気を失っていただけだよ。安心なさい」
言って、フユはボクの顎から額にかけてをペロリと舐めた。
「コウタは? コウタは、どうしてここにいるの?」
ボクはコウタの顔に向き直り、抱かれたままで問いかける。その時ようやく、ボクはコウタの目がいつもの優しいものではないことに気がついた。
「ナツ、だめじゃないか! いったい、どこに行こうとしてたんだ! こんなに山の近くまで来て、なかなか帰ってこなくて、しかも車に突っ込んでいくだなんて……ばかやろうっ!」
────コウタが、怒っている。怒って、怒って、そして、怒った目から、雨よりもしょっぱい水を、ボクのおでこや頬に落としている。
「コウタ……?」
「ナツ……無事で、良かった」
ギュッとボクを抱き締めたコウタの腕は、温かいのに……何故だか、小さく震えていた。
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