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ありがとう。ありがとうコウタ。
ボクはコウタの膝に手をついて、身体をめいっぱい伸ばしてその首もとに顔をすり寄せた。
「ナツ、どうした? 食べないの? 今日はたくさん歩いて疲れたろ?」
それでもボクは、しつこいくらいに何度も何度も自分の顔をすり寄せた。
キャンディが言っていた。「失ってからじゃ遅い」
ウシが言っていた。「時間は永遠じゃない」
フユが言っていた。「失うのが怖いのさ。大切なものを」
ボクはコウタの大切で、コウタはボクの大切なんだ。
「コウタ、プレゼントはないけれど、ボクはずっとコウタの側にいるよ。ずっとずっと、側にいるね。大好きだよ」
ボクは精一杯の気持ちを、コウタに伝えた。
「うん、ナツ。僕も大好きだよ。ずっと一緒にいようね」
コウタは優しく、ボクを抱き締めた。
いつものように、フユの顔が割り込んできて、ボクたちは温かく笑い合った。
カサリと音をたてた、ソファーに置かれた袋の中。そこには赤と白の小さなサンタ帽子と、一回りサイズの大きい、ツノのついた被り物。
ボクとフユのものだろうか。
数日後のクリスマス。どうやらボクは、サンタの帽子を手に入れるようだ。
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