ウシのツノ

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ウシのツノ

 キャンディに言われたとおり、ボクはウシを探しに真っ直ぐに歩いた。建物が徐々に減ってゆき、代わりに大きな大地が姿を現しはじめる。  しばらく進むと、不思議な形の建物が目に入り、自然と足が速まる。 「ここかあ」  呟いて、その建物に足を踏み入れる。変わった臭いだ。盗人のような足運びで少しずつ少しずつ前に進むが、目的のウシとやらは見つからない。  どこにいるんだろう?  「そこの小さい坊や、こんな所へ何をしに来たの?」  突然、頭上で大鐘が震えるほどの声が耳の奥まで響いた。  驚いて咄嗟に飛び退き上を仰ぎ見ると、そこには今までに見たこともない、キャンディより、フユより、コウタよりも大きな体があった。 「ウシ?」 「あら。私たちを知っているのね坊や。いかにも、私たちはウシと呼ばれるものよ」  ああ、ようやく会えた。  驚きか安心かそれとも疲れからなのか、体から力が抜けて、思わずしゃがみこんでしまう。 「ようやく会えた。あのね、ボクはツノが欲しいんだ」 「まあ。ツノが欲しいだなんて。坊やは強くなりたいのね?」 「違うよ。大切な人に、プレゼントを送りたいんだ。ツノがあれば、それが叶うんだ」 「それは初耳だわ。でも私たちのツノには、そんな効果はないの。もっと、大きなツノが必要なんじゃないかしら」  確かに、ウシが屈んで見せてくれたツノは物を運べそうな程大きくはない。 「もっと大きなツノを知っているの?」 「ええ。放牧の際に、よく見かけるの。人が滅多に立ち入らないような山に住んでいる、シカという動物よ」
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