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第一章
間近に迫った彼女の瞳に、今にも吸い込まれそうだった。
「興味があるんでしょ」
彼女は化粧をしていた。頬は赤みを帯び、発色の良い唇は潤い、まっすぐに彼を見つめる瞳は色素の薄い琥珀色だった。瞼の上はほんのりと紫色に彩られ、光の反射によって時おりそれが宝石のように煌びやかな輝きを放っている。
舐めつけるように見下ろす彼女は、艶めいた笑みを浮かべながらゴムで縛った後ろ髪を解いた。その拍子に首筋から甘く芳醇な香りが漂うと、彼の思考は完全に麻痺した。
目を逸らすことが叶わず、瞬きすら忘れるほど彼女を一心に見つめていた。まるで、あの時と同じように――。
「私の共犯者になってくれる?」
細くしなやかな指先で彼の手に触れながら、彼女は耳元にそっと囁いた。その言葉は彼にとって、悲しいほどに興味をそそられるものだった。
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