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[お泊り]
布団が二組。しかもぴったりとくっつきあっている。
「あの、もう少し離しても?」
「狭いからさ無理だよ」
いや、離す位の余裕はある。
「それでも離すというのなら、一つにするけれど?」
「だ、駄目です。俺は大柄ですからはみ出してしまいます」
「そうだね」
本当は『同衾』という言葉が浮かんで何を考えているのだと自分の太腿を叩いた。
「何、足が痺れたの?」
「そうです」
本当は違うが司狼が勘違いをしてくれたのでそれにのっかることにした。
「そうなんだ。揉んであげるね」
「え、大神さん!?」
細くて綺麗な手が太腿へと触れる。
まさかの展開に頭が真っ白になって思考がとまる。
「逞しいね」
ぺろりと唇を舐める舌がいやらしく、心臓が大きく跳ねた。
「な、治りましたから」
我にかえり司狼を引き離す。するとチッと舌打ちが聞こえ。
「おおがみ、さん?」
「あ、うん、何でもないよ。さ、寝ようか」
「はい、おやすみなさい」
布団に入ったのは良いけれど眠れるだろうか。他人の家に泊るなんてはじめてのことだった。
しかも相手は熊一を好きだという。こんなに綺麗な人が自分なんかをと思ってしまう。
「そんなに見つめないで」
いつの間に顔が向き合っていたのだろう。
「ひっ」
と声をあげてしまい慌てて口を押えた。
「ちょっと、お化けをみたような声をださないでよ」
「すみません」
確かにそれは失礼なことだ。
「ふふ、熊一はお化けが怖いの?」
「そんなことないです。こんなに綺麗な人をお化けだなんて」
すぐにそう答えたが司狼が聞いてきたことと別のことを答えてしまった。
「嬉しいな。俺のことをそう思っていてくれたの?」
「え、あっ」
違う、そう口にしそうになり、綺麗なのは本当のことなのでその通りなのだが、上手く伝えることができない。
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