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仕事の効率を上げるために朝食は必ず取るようにしている。
面倒な時はコンビニで買ったおにぎりを食べ、時間に余裕があるときは自分で用意する。
立花の部屋に泊ったときは冷蔵庫に水しかないのを知っているので近くのコンビニで食材を買ってくる。
用意したのはパンとハムエッグ、サラダとコーンポタージュだ。
テーブルの上に並べ終えた時、
「なんだこれは!!」
そう叫ぶ声が聞こえ、こちらに向かう足音がする。彼の身に何が起きたのかその理由を知っていた。
「高坂ぁぁぁ」
これが会社ならブリザードが吹き荒れていることだろう。だが今はふたりきり。遠慮をする間柄ではないから感情を素直に見せる。
「ん? ご飯ならもうすこしまて」
わざととぼけてみせれば、
「なんだこれは」
とシャツのボタンを外して上半身を晒した。
「あら、やだ、朝から大胆」
綺麗な肌に舞う真っ赤な花びら。
それは昨日、寝てしまった相手に対する嫌がらせだ。
「ふざけるなっ!」
「へぇ、俺をさんざん煽っておいて一人で寝てしまったのは誰だ?」
「む、それは……」
昨日のことを思い出したか、頬がうっすらと赤く染まる。
そして首を振り、シャツのボタンを止めた。
「おい、飯はまだか」
「お前は俺の旦那様かよ」
「そういうつもりではなくてだな、くそっ、だからお前は嫌なんだ」
ペースを乱されると花村がぼやいた。論破で追い詰める姿を見たことがあってもたじろぐ姿はそうはない。
「本当、立花といると飽きない」
我慢できずにクツクツ笑うと、不機嫌そうに眉を寄せて冷たい目が高坂をにらみつけた。
<了>
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