11人が本棚に入れています
本棚に追加
その夜、蝶と花は布団を並べておやすみなさいと言い合った。それは合図のようなもので花の部屋でおしゃべりが始まる。花の話すものは、毎日見守っていた蝶の話だった。
「こんなに小さくてさ、でも懸命に生きててさ。応援したくなるじゃん?」
「花はその蝶のことは好き?」
「大好きだよ!」
蝶の心はじんわりと温かくなる。好きな人に好きだと言われる。こんな幸せなことはない。
「私はね、毎日顔を見る男の子を素敵だと思ってて同じ場所にずっといたの。そこにいれば会えると思ったから」
「不思議だね。僕が見ていた蝶みたい」
花はそう笑う。蝶は迷う。それが自分であると言うべきか言わないべきか。蝶は決める。
「もし……、その蝶が私だと言ったら花は驚く?」
花はうーんと声をあげてからはっきりと口にした。
「驚かないよ。だって嬉しいことじゃない? 毎日見守っていた蝶が僕のもとに人間になって会いに来てくれるなんて。素敵なことだから僕は驚かない。それより喜ぶよ」
やはり花は優しい。蝶が感じたままの人だった。
「うん。私は花に会いに来たの。だから明日花壇にいなくても驚かないで。私はここで花を待っているから」
「うん……」
スースーと花の寝息が聞こえる。蝶もそうっと目を閉じる。本当のおやすみなさい。二人は仲良しの兄妹のように並んで眠りについた。
最初のコメントを投稿しよう!