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花のお父さんは遠くに行くなと二人に言い含めた。その言葉は二人は守ったが、雪山の天気は変わりやすい。
吹雪が来たのだ。前が見えずに二人はスキー板を履いたまま立ち止まる。
「止むのを待とう」
はじめて見た花の真剣な顔。蝶は言われるままに腰を下ろす。吹雪はさらに激しくなる。
「帰れるかな?」
「帰るんだよ。だから今は動かないほうがいい」
だが吹雪は止まない。その中、花がガクガクと震えだす。
「花? 花!」
花はパタリと横に倒れる。
「花! 誰か!」
蝶は叫んでも吹雪でその声はかき消される。
「どうすれば?」
慌てる蝶にできることはない。そして、ついに口にする。
「空を飛べたらすぐに助けを呼べるのに!」
蝶の目から涙が一滴落ちる。その瞬間、蝶の耳に言葉が届く。
「蝶に戻るならばもう生きられないぞ?」
蝶は花を見やる。花には言葉がきこえていないようだった。
「花を助けられるならそれでもいい!」
蝶は駆け出す。スキー板も脱いで。雪の中を。
蝶の姿は変わっていく。人から蝶へと。雪山に羽ばたく黄色い蝶。それを目にした人は、何事かと追っていき倒れた花を見つけた。
すぐに救助が駆けつけた。担架で運ばれる花の肩には小さな黄色い蝶が止まっていた。
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