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すべてが真っ白い物に包まれていったその後に。
ふと意識を取り戻すと、目の前に並ぶ時計の針は何事もなかったかのように普通に動き始めていた。
「………!」
ずっしりと突き刺さる、心の底の痛みを探る。
さっきまでの恐怖を思い出し、頭の先に衝撃が走る。
そして鳥肌が立ち、意図しない涙が溢れ落ちた。
「り…璃咲ぁーっ!」
「んーっ?綾音、いきなりどうした?……え?顔…、真っ青だよ!」
助かった!助かったんだ!!
正直あの状態から永遠に抜け出せないことを想像して、絶望していた自分がいたし…。
「周りの時間が…止まっちゃって、私だけがそこに残されてたの。何時間もずーっとずっと一人ぼっちで動けなくて、すっごくすっごく怖かった……」
「うんうん、そっか。もう大丈夫だよ。とりあえず、あそこでお茶しよっか。いこ」
そう言って璃咲は私の手を握り、足早に雑貨屋さんを後にした。
ちょっぴり冷えかけている、璃咲の小さな手。
その中に感じるささやかな温度が、今の私にはとにかく貴重で温かく感じられたんだ。
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