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雑貨屋さんから20mほど行った先にある、コーヒーショップ。
とりあえずそこに入り、ちょっと落ち着くことにした。
席に着いてコーヒーを二つ頼み、今まで起きていたことを璃咲に全て話した。
言葉に詰まり、胸の奥から絞り出すように話す。
冷静になろうと焦る気持ちもあり、冷や汗にも似た嫌な汗が、頬をゆっくりと伝っていった。
「…そっか。…綾音、きっと怖い夢を見てたんだよ。疲れてるんじゃない?もう、大丈夫だからさ」
「…夢?夢なんかじゃないよ。だって何時間もあのままだったし、その間何を考えてたかとか、全部はっきり覚えてるし…」
そう、あれは絶対に夢なんかじゃない。
あんなに長い夢を、現実の一瞬の間に見る訳がないよ。
「綾音。それって本当にあったことなのか、あったつもりになってることなのか…どっちなのか分からなくない?」
「……?」
「一瞬気絶したとか、そんなのかもしれないし。きっと混乱してるだけだよ。ちょっと調子が悪かったりしてさ」
「…そう……なのかなぁ」
そう言われて思い返してみれば、『今』以外は私の頭の中だけにある、曖昧な過去。
あんな変な体験は、確かに現実だったとは思い難いけど。
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