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どちらにせよあれが現実だったのかなんて、今は確かめる術はない。
「綾音、よかったらバイト代わろっか?今日は帰ってゆっくりしなよ。明日は学校休みだしさ」
「…うん、ありがとね。璃咲が平気なら、そうしたい。ゴメン」
バイト先に連絡を入れ、璃咲と別れて家に帰る。
食欲は無かったけど、ほんの少しだけごはんを食べて、早めにお風呂に入った。
ふぅ…。
いつもよりものんびりと湯船に浸かり、そして今は…20時を少し過ぎたところ。
部屋に戻り、髪を乾かしながら携帯を見てみると、カナデくんからLINEが来ていた。
『あーちゃん、お疲れ!』
『今日もバイトかな』
『今日はちょっと体調崩してさ』
『バイトは休んじゃったんだ』
『えーっ!大丈夫?風邪?』
『んー』
『風邪とは違うんだけど』
『まー大丈夫だよ』
『ありがとね』
『そっか、お大事にね』
『俺もさー、最近調子悪かったんだけど』
『今はすごく調子いいんだ』
『俺の体調の良さ、分けてあげたいくらいだよ』
今日あった事をカナデくんに話してみようかと思ったけど…おかしな人だと思われそうだし、やめておこーっと。
そしてそれから他愛のないやり取りをしばらくして、多少気分は紛れてきたような気がする。
返信も少しずつ間が空くようになってきたし、会話はなんとなく一段落したから、とりあえずベッドに入ってみる。
仰向けになってじっと天井を見つめていると、また時が止まってしまうんじゃないかと考えてしまい、怖くなるんだ…。
呼吸は浅くなり、過呼吸気味にする息は、震えて波打っているのが自分でも分かるし。
あの恐怖に支配されそうになる度に、寝返りをうったり、手を動かしてみたり。
身体が動くことに安心するんだけど、その次の瞬間にはあの記憶が何度も蘇り、涙と震えから漏れる声が静寂の中でこだまする。
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