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「そろそろ出来たかな。どうやって食べようか」
「食べる分だけ皿に取りましょうか」
「だな。何から食べる?」
「卵と味噌の組み合わせ、超合いますよ。最初に食べますか」
「えー、どうしようかな。…後に取っとく」
「じゃあ、僕はとりあえず平天と大根とちくわで」
「はいはい。入れますよー」
「僕、向こうに持っていきますね」
「俺は、ゴボウ天と大根とこんにゃくにしよう」
1Kの部屋の小さなテーブルで90度に座わると、当然脚が触れる。味噌と辛子のチューブを真ん中に置いて、夏生と高岡は新しいビールを開けておでんをつまみ始めた。
名古屋の付け味噌を初めて食べるという高岡は、最初恐々だったが、最後にはどっぷりハマり、仕上げの卵は味噌まみれにして食べるほどだった。フリーザーにあった白米をレンチンして出してあげると、そこにも味噌を置いて食べたので、びっくりした。
「かなり気に入ったみたいですね」
「スゲー好きかも。こっちでも売ってる?」
「どうだろう。本気で探したことが無いんですよ。言えば送ってもらえるから」
「俺、探してみようかな」
シンクで片づけをざっと済ませ、ベッドサイドに凭れ掛かって雑誌を見ている高岡の方に行くと自分の横をボンボン叩いて、ここに座れという。なんだか子供じみていて夏生は笑えてしまった。言われるままに座ると、夏生の方に寄りかかってきた。
自分より大きな身体がくっついてくるので「重いですよ」と言って笑いながら押し返すと、もう一度強く寄りかかってきた。押したり返したりを繰り返していると、お互いに吹き出しそうになった。
そして、
「甘えさせてよ。なっちゃん」
何度目かの押引きの後、耳元で高岡に言われ、夏生の力がふっと抜けた。
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