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 人気のない廊下を進みながら今日の打ち合わせが始まった。先生は割とさっさと歩く人だ。背が高く歩幅も大きいので、夏生も自然と早足になった。 「とりあえず教室へ行ったら、いつものようにパソコンのログインを進めてもらえるかな。ファイルにパスワードが入っているから、機材ナンバーと出席番号を合わせて」 「分かりました。前回は大変でしたね」 「ああ、あの時は助かった。タブレットが順番ぐちゃぐちゃで置いてあったから、酷かったよね。誰だよ、ってマジで思った」 「一瞬眩暈がしましたよね」 「佐倉君がすぐに数を数えて並べ替えしてくれたから、普通に授業できた」 「ログイン作業もさすがにサポート無しだと難しいと思います。1クラス35人くらいでしたっけ」 「あれはキツイ。佐倉さんもやっていて飽きるでしょ」 「バレてますか。やっぱり飽きますよ。ひたすら、パスワードの打ち込みですもん。だけど、先生があんなことに時間を取られたらいけないと思うし、僕らが手伝えてよかったと思います」 「そう言ってもらえると、結構救われた気になるよ。正直プログラミングの授業は試行錯誤が多いから」 「お疲れ様です」 「ま、頑張ろう。佐倉さんと組めてよかった」 「僕相手に褒めても何も出ないですよ」 「はは。調子よすぎたかな。褒めたごほうびにモニターの設置も手伝ってください」 「はーい」 パソコン室は南棟の2階にある。理科室とか音楽室がある並びの1室で、渡り廊下に近い割に児童の行き来は少ない。先生は持ってきた鍵で施錠を外し、教室に入った。まずは2人で教室中の窓を開けしっかり換気するようにした。 「じゃあ、頼むね。僕は黒板を書いておきたい」 「了解です」  夏生は窓際の列から席を移動しながら動作確認とパスワード入力を開始した。電源が抜けていないかなど細かなことに気をつけながら、チェックしていく。何回かしている作業なので自分も手慣れてきた。ここのパソコンは立ち上がるのに少し時間が掛かるので、数台ずつまとめて電源を入れて、効率よく進められる方法を自分なりに考えるようにし始めた。あくまでサポーターとして教師の指示の下での作業になるので、夏生はとにかく何でも相談するように心がけている。夏生が自分勝手に進めないのは先生も安心できるらしく、丁寧に話を聞いてくれるのでお互いにやりやすいんだと判ってきた。  給食後の休み時間は少し長めだ。夏生が小学生だったころは縄跳びやドッヂボールをしに運動場へ出ていたが、今のご時世はそうもいかないらしく、教室で読書をしたりする時間に充てられているそうだ。
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