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「先生、もう5台でログインが全部終わりますが、何か手伝うことありますか」  仕事、仕事。口を動かす以上に手を動かさないと間に合わない。気持ちを集中させないと、ミスってしまう。 「さっき話していたモニターの準備を頼んでいいかな」 「分かりました」  この作業も前回もやったので覚えている。モニターを見やすい位置まで移動させ、教壇横の棚からケーブルを取り出してモニターと教師用のPCとを接続した。勝手にPCは動かせないので動作確認はお願いすることになる。 「繋いだので見てもらって良いですか?」  配布する教材の確認をしている先生に声をかけると、すぐに来てくれた。二人で画面を覗き込む。先生がフォルダの中の教材ソフトを起動させると、アニメ風のキャラの画像が出てきた。モニターにも同じ画面が出ているのを二人で確認した。 「OKだね」  高岡先生がほっとしたように微笑むと、それに合わせたように予鈴が鳴った。 「間に合って良かった。準備が多くて未だに焦るよな」 「もうすぐ児童さんたちが、来ますね」 「ありがとう。佐倉さんが手際良く進めてくれるから助かるよ。僕達は結構名コンビだな」  先生は、労うように夏生の肩に手を置きポンポンと叩いた。振り向くと、そこには自分より少し背の高い高岡の顔があった。上目遣いに見上げるとまたもや顔が近くて、ちょっとドキリとした。 「期待に応えられるよう、頑張りますね」  自分の口から出たのは無難な回答で、先生はもう一度夏生の肩を叩くと、教室のドアを開けに行った。児童の声が渡り廊下の向こうから聞こえてくる。 「おー、なっちゃんだ。今日もいるの?」  クラスの男子が夏生に気がついて声をかけてきた。 「こんにちは。よろしく」  教室の後ろに待機していた自分のところに何人かの児童がやってきて取り囲まれる。 「お前ら、そもそもなっちゃんじゃないだろ。『サポーターの佐倉さん』てキチンと言わなきゃダメ。タメ口も禁止」 「はーい」  先生がお調子者の男子たちを窘める。夏生なんて小五の彼らからしたらほぼ同級生扱いしそうな勢いなのだ。  すぐに授業開始の鐘がなりそうなので、夏生は先生と二人で出席番号順の席に着くように促した。イマドキの子は切り替えが早いのか席に座ると、サッと真剣な表情に変わる。  廊下側の席の女子が手を揚げた。 「なっちゃーん、私のマウスが動きません」 「こら、またそう呼ぶ。佐倉さん、見てあげて」  先生の指示が飛び、夏生は急いで補助に入る。これから2時限、がんはらねばと再度気を引き締めた。先生と一緒にする授業はとても楽しくて、充実感以上のものが感じられて、夏生にとってとても大切な時間になり始めていた。
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