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「あ、思い出した!」
そう言って、
コウジロウさんはズボンのポケットから小さな箱を取り出した
「えっと…」
「俺、撮影の事ばっか考えてて、すっかり忘れてた!
はい、これ」
その箱を、私に手渡す
「これ、風邪薬ですよね。
コウジロウさん、
私が風邪引いてるの分かったんですか?」
この人はこんな所迄、
鋭いのだろうか?!
「違うよ~。
田中君があの後、
これ買って帰って来て。
広子ちゃんが休憩で居なかったから、
俺に後で広子ちゃんに渡しといてって」
「――はい」
「ええ?!
広子ちゃん?!」
コウジロウさんは
驚いた顏でこちらを見ている
それもそのはずかもしれない
私はその風邪薬の箱を手に持ち、
突然泣き出したから
目から、大粒の涙が溢れ落ちる
ボロボロと
それは、悲しいものではなくて、
嬉し泣きなのかもしれない
なんだろ?
その田中たちおの優しさが、
今の私には本当に嬉しくて
本当に今の私は、
色々と弱っているから
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