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4.移り変わっていく景色
その日を境に私は本格的に大学受験対策に打ち込んだ。
学校に居残りしたり、図書館にこもったり、時々塾の講座を受講したり。
先生には推薦入試を狙えると言ってもらえたので、小論文や面接の練習もした。
志望理由を書くときは涙が出そうになるので、あえて人目がある学校で書いたりして。
すると自然と、同じ推薦入試志望のクラスメイトとも少しずつ話す機会が増えた。
意外と母のことを突っ込まれずに楽しく過ごせると気づいたとき、もっと早く友達と打ち解けていればよかったと後悔する。
今日も学校帰り一緒に自転車で帰っていると、先を進んでいた子がブレーキをかけた。
「忘れてた。こっちの道、今工事中じゃん」
「UターンだUターンだ」
「県道沿いの道ならいけるんじゃない?」
私たちは口々文句を言いながら、別の道へと向かう。
ふと、道路工事が進む道を振り返る。田んぼの中の細い一本道は今後、二車線の歩道付きの道路になるようだ。
道路の拡張工事や宅地開発の影響で、塾への道のりも仮道がグネグネと、毎日のように変わっていく。
「本当にここは、私たちが知ってる桜ノ端市じゃなくなっちゃうんだね」
桜ノ端。その市名を呟くと、胸に甘い痺れが走る。抱きしめてくれた真っ白なシャツと柔らかな声、桜色まじりの不思議な瞳の色を思い出す。
ーー会いたいな。
私は田んぼの向こう、夕日が沈んでいく方角にこんもりと聳える裏山へと目を向けた。あそこに神様がいる。そう思うだけで嬉しくて、頑張る力が湧いてくる。
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