第1話:夏休み

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 橋田と別れ、帰宅。  庭に、姉さんの自転車があった。 「お姉ちゃん達も、帰ってきたのかな?」 「だろうな」  姉さんと吉倉の高校も、今日が終業式だ。  ちらっとれんげ荘を見ると、吉倉の自転車を見つけた。駐輪場がないので、吉倉は自室の前に自転車を置いている。  ……まあ、わざわざ確認しなくてもわかるんだけど。だって庭に入った時点で、吉倉のはしゃぐ声が聞こえてくるから。 「ただいまー」 「ただいまーっ」  玄関の引き戸を開け、ふたりで声をかける。すると、「うおっ! 待ってたよーっ」と、吉倉が走ってくる。 「ねーふたりともっ! 水着、どっちがいいと思うーっ? ホットパンツに挑戦したいとも思うんだけど、柄はこっちの方が好きでさー」  と、おれ達の前に突き出してきたのは、水着のカタログ。 「おれ達、帰ってきたばかりなんだけど……」 「や、だって、そろそろ決めないとじゃん!?」  いつも元気な吉倉だけど、今はとびきりはしゃいでいるようだ。カタログをきゅっとにぎりしめ、目をキラキラさせた。 「旅行! もうすぐなんだよ?」  吉倉の言うとおりだ。  今度、れんげ荘のみんなで旅行に行くことになった。  ゴールデンウィークは遠出ができなかったので、夏休みに一度くらいは……。ということで、先月末、じいさんが提案していた。  光さんは仕事があるし、草一郎は現在、テスト期間中。  吉倉にいたってはバイトを辞めるらしく、今のうちに稼いでおきたいそうだ。受験生だしな。  でもみんな、都合を合わせてくれた。 「しず、芙美花ちゃん。お帰りなさい」  と、エプロン姿の姉さんが、台所からやってきた。 「ご飯にしよ。今からおそうめんゆでるね」 「うぇーいっ、そーめーん!」 「そーめーん!」  吉倉が飛び跳ねるので、芙美花まで一緒になってはしゃぎはじめた。  そんな吉倉は、まだ制服姿だ。「着替えてくる!」と、靴をはきはじめる。今にも走り出しそうな吉倉を、姉さんが引き留めた。 「先輩。草一郎さんを呼びにいってくれますか? お昼、一緒に食べようって誘ってるので」 「……勉強中かな?」  おれが聞くと、姉さんがうなずいた。 「今日は二時半から、ふたつテストがあるんだって」 「ん、じゃあ呼んでくるね! 芙美花ちゃんもランドセル置いてく?」 「そうする! お姉ちゃん、すぐもどるねっ。芙美花、きゅうりいっぱいほしい!」 「あたしは肉多めね!」  ……などと言いながら、二人は出ていった。  取り残されたおれと姉さんは、顔を見合わせる。 「……そうめんに、肉?」  思わず聞くと、姉さんはちょっと眉を下げつつ、笑った。 「肉みそならあるよ」
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