4人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
小学六年生真由
町外れにある小さな私立図書館、真由はいつもこの場所にいる。
館内には館長以外誰も居らず、神話や異世界の中に没頭できるこの空間が好きだからだ。
大きな窓から差し込む光が薄れ、室内に夕闇が入り込んでくると閉館時間が近いのだと真由に理解させる。
「ふうーっ」と小さく長い溜息を一つ吐き、読みかけの本に栞を挟んでパタンと閉じる。
いつもなら館長がやってきて優しく微笑み、
『もう閉館の時間だから……
気をつけてお帰りなさい』
真由と同じくらい名残惜しそうに声を掛けてくるのだが、
「どこに行ったんだろ」
そんなに広くない館内を見回しても見つからない。
読んでいた本を元の場所へと戻し、扉を開けて外へ出ると、
「もうそんな時間なんだね」
少しだけ息を切らせた館長が立っていた。
「うん、今日はもう帰るね」
図書館を後にしようとすると、
「ちょっと待って。
これから私が言うことをよく聞いて」
いつもは優しく微笑むだけの館長が、厳しい表情で饒舌に話し始めた。
最初のコメントを投稿しよう!