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人形
彼女の手紙はここで終わっている。
まるで昔の小説のような手紙だ。
とことん言葉遣いが変だ。
でもそれすら、彼女の存在証明だ。
彼女が生きていた証拠だ。
自分の隣にいた証拠だ。
冷たくなった手先を温めながらリュカはそっと手紙を机の上に置いた。
代わりに封筒の中に一緒に入っていたCDを取り出す。
彼女の手作りであろうジャケットにはただ一言。
「 リュカへ」
彼女はどこまでも変だ。
今でも彼女が考えることは少しだってわからない。
なんでCDなんか送ってくるのだろう。
リュカは薄ら笑いを浮かべた。そのまま天井を向く。
止まらない涙が白い頬を伝う。
震えが止まらない肩を自分の腕で抱きながらリュカは静かに目を閉じた。
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