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夜、二十時。樋口乃々華は仕事を終えた足で、一人、夜遅くまでやっているスーパーで買い物を楽しみ、レジを済ませた。買い物の袋をぶら下げ、カートを戻している時に、乃々華の近くをたった今通りすぎた保育園年長くらいの女の子は、嬉しそうに、隣にいた母親を見て明るい声で話をした。 『ねぇ、ママ。トマトはね、ちょうちょに変身できるんだよ』 どういうことだと思い、乃々華は思わず自転車置き場に向おうとした足を止めて、親子を見てしまっていた。興味を引かれた乃々華とは違い、女の子の隣にいる母親は、買い物に集中したいようで 「ふうん」 と女の子の目も見ずに、話を軽く流していた。女の子の母親は、乃々華と同じ二十四才くらいに思うが、それでも同一人物ではないのだから、考え方が違うのも当然かと、乃々華は感じた。親子はそのまま立ち去り、結局、乃々華には、答えが分からずじまいだった。
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