優しい毛むくじゃら

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優しい毛むくじゃら

 空は快晴、道路には車という大きな鉄の塊がブロロロロッという音をたてて、臭いガスを撒き散らしながら凄まじい速度で往来している。  今いる場所は静岡という県らしい。遠くを見ると高い山があるのがわかる。  富士山というらしい。頂上付近には雪が積もっているのがわかる。  人間は登山日和だとかなんとか言っていたが、あんな植物もろくに生えていなさそうな山に登ることの何が面白いのだろうか?人間の考えていることはまるで理解できない。 まあ、私自身何故一箇所に留まらず、この地を歩き回っているのかと聞かれると答えに困ってしまうだろうが。  そんなことを考えながら歩いていると、自分の歩いている場所から2間(約3.6m)ほど前に何か落ちている。この場から見たところ大きな石か何かであろうか?灰色をしたまん丸の物体が落ちている。  小走りで近づいて手に取ってみる。随分とザラザラしていて、表面には苔が生えている。重さはそこまでない。大体一斤(600g)ほどであろうか?よく見ると封と彫り込まれているようだ。 『何か封印でもしていたのか?』  石を眺めて考えていても仕方がないと思い手放そうと思ったのだが、何やら気になる。 『持って行くだけ持って行ってみようか』と思い、石を手に持ったまま、歩き始めた。   歩いていると、いつのまにか木が鬱蒼と生えた場所に出た。どこまでも続いているようなその森は不気味な空気を醸し出している。
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