赤い森の魔女の●●譚

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赤い森の魔女の●●譚

「おい、見ろよ。『赤い森の魔女』だぜ」 「まあ、なんて醜いっ! 恐ろしいわ」 「しっ! 聞こえたらどうする。魔法で蛙にされちまうぞ」  ――久しぶりに街に出てみれば、これだ。「赤い森の魔女」ことアリシアは、胸の内で小さくため息を吐いた。  赤褐色の幅広とんがり帽子とお揃いの色のローブに身を包み、皺だらけの顔には爛々と輝く瞳と鉤鼻が鎮座している。  誰もが心に思い描くであろう「魔女」の姿を体現した存在。それがアリシアであった。  「魔女」とは人から生まれながらも人を超越したモノ。長い年月を生き、自然と人間との懸け橋となる存在だ。  人間達が自然の恵みを徒に浪費しないよう監視する一方で、精霊や妖精達を鎮め災害や疫病が人間達を滅ぼしてしまわぬようバランスをとる、言わば調整役である。  人々の行いが目に余れば魔法でこらしめるし、逆に彼らが困窮していれば森の恵みや秘伝の薬を届け救う。尊敬と畏れを一身に受ける存在であった。  今日も、街の薬師のもとへ秘薬を届けに来たのだが……街の人々の反応は悪い。アリシアの見た目の醜悪さ故に、尊敬の念よりも畏れや嫌悪の方が遥かに上回っているのだ。  ――困窮している時は、「魔女様、魔女様」と媚びを売るくせに。アリシアは、人間達の現金さに鼻を鳴らしながらも用事を済ませ、やや早足で街を去ろうとした。  その時だった。
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