僕の経歴

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僕の経歴

 僕は、東京の美術系の大学を卒業後、北海道の公立中学校で美術の教師をしていた。本当は大学院へ進学したかったが、頑固者の父親が許してくれなかった。 「とにかく一度、就職しろ。5年働いて、まだ勉強する気があるなら、自分で稼いだ金で好きなだけ勉強すればいい。」 そう言って、故郷の北海道に呼び戻されたのだ。  僕が初めて勤務した中学校は札幌市内でも有名なアウトロー地区にある凄まじい中学校だった。いちいち書く気になれない程、ありとあらゆる暴力と非行が蔓延し、全く無神経な数名の教師を除き、まともな神経の教師は皆、ノイローゼ気味だった。  そんな過激な職場に勤務して4年目の冬。大学時代の親友、松野から電話があった。松野は、東京近郊のどこか私立の学校の美術教師をしながら彫刻作品を制作し続けていたが、いくつかの大きな賞を受賞し、もう教師の仕事は辞めてアーティストとして制作に打ち込む覚悟だという。そこで、彼は、自分の後釜として、僕に、その私立の学校の美術教師をやってくれないかと言うのだった。 「公立の教師より給料は高いし、生徒は皆、金持ちのぼんぼんだから気質が穏やかで平和な毎日さ。」  今の生活に嫌気がさしていた僕は、二つ返事で引き受けることにした。
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