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 スナック菓子やシリアル等を販売する、某大手食品メーカーに勤めて約七年。  東日本支社の企画・マーケティング部に、とても優秀な切れ者がいるというのは、一部ではよく知られた話で、冴島君の活躍ぶりは聞こうとしなくても自然に耳に入ってきた。  この三年、話題になった商品や企画のいくつかに彼が関わっている。様々な知識が豊富で、業界のトレンドや消費者のニーズに敏感なのは当然のこと、緻密で論理的で、でも柔軟で周囲を動かす実行力もあって……って、とにかくあらゆる面でセンスの塊なのだと、誰から聞いたんだっけ。  要するに結果をちゃんと残し、本社の期待されるポジションに必要とされる人材として戻ってくるということ。いずれ会社の中核を担うような人は、若いうちに地方で経験を積むことが多く、冴島君もおそらくそのルートなのだろう。 「ウタさんとも関わる事ありそうですね」 「そうだね、あるのかな」  嬉しくもない笑みを浮かべながら、小さく頷いた。  企画部か……。そうかーー。  私は、その商品企画部と同じフロアにあるデザイン部で、商品のパッケージデザイン関連を担当している。三年近くこの部署に在籍しているが、今のところ異動の予定はなく、もし本当に冴島君が企画部に異動になるのだとしたら、頻繁に顔を合わせることになるだろう。 「冴島さんが来たら紹介してくださいよ、噂ばっかりで興味津々なんですけど」 「ん、いや、どうかな、同期だけどわたし、あまり仲良くないから」 「ええっ、ウタさんが仲良くない人なんて、この世にいるんですか?」 「……いるよそんな。なかなか馬が合わない人とか」
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