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「あのさ、それって会社の近くのヨーグルト専門店の期間限定のやつじゃない?」
お盆の上にのせられたデザートらしきものを控えめに指差しながら聞くと、
「ああこれ? 貰いもの」
「それね、お店でも買えないんだよ。お取り寄せ専用なの、季節のフルーツヨーグルト」
「へえ」
絶対わかってない、その貴重さを!
〝食べたいけど高いしなあ〟って、取り寄せるのを諦めたやつなんです、期間限定品!
いいな…は顔には出さず、ごちそうさまを言って立ち上がると、同時に冴島君も食事を終えたようで、ごちそうさまと言う。
意外と礼儀正しい。
「じゃ、お先に」
「入山、これ」
「えっ?」
「どうぞ。食べたいんだろ?」
「いや、でも折角。だってめちゃくちゃ美味しいんだよ、これ。クリーミーで濃くて」
「もう一つあるから」
「ほんとにいいの!? やった、嬉し過ぎる最高。午後も頑張れる!」
今日の運は使い果たした。
ハヤシライスといいヨーグルトといい。
「ヨーグルト一個で、安いな」
「ちょっとこれ、いくらすると思ってるの、一個1,100円、ケーキ二個買えるんだよ? 全っ然安くないから!」
「……」
「容器もいいよ、ラグジュアリー感あって」
「……まぁいいや」
これは職業病。
このパッケージ、素材もいい、ステキ。
あれ、何の話をしていたっけ?
なんか今、冴島君とあまり抵抗なく話せていたような気がする。
話すようになれば、自然と慣れるのかもしれないな。美人は三日で飽きると言うから。
少しだけ、芙美と田中君に感謝した。
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