3.つまりはそういう事

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〝例のプロジェクト〟は、予定通り順調に、サクサク進んでいる。  商品のパッケージをデザインするといっても、実際はその前の準備段階が重要で、今はマーケティングや開発の人達と連日打合せが続いているが、担当者の誰と話しても明確でスピーディーでやり易い。 「チームの皆さん意識が高くてね、活気があって雰囲気がいいよ」 「仕事する環境が良いって大事よね」 「うん、ほんとそう」  そしてその仕事をし易い空気、人間関係が良好で意見を出し合える風通しの良い環境を作り出しているのが、冴島君ではないかと、最近気づいた。  知識も情報量も多く判断力があって、仕事ができる人の条件をいくつも満たしている。 けれどそれだけじゃなくて、とにかく視野が広くいろいろなことに気付く。怖い程に。 誰に対してもフラットで、でも人の特性をよく見ており、その人の心情を汲みながら話をする。そのせいか彼の隣にいるとなぜか皆、モチベーションが向上しているように見えるのだ。  正直もっと冴島君自身が前面に出て、周りをぐいぐい引っ張っていくような強気なやり方で、彼の筋書き通りに進んでいくのだろうと思っていた。 「もっと威圧的な態度でさ、有無を言わさず〝オレの言う通りに動けよ〟的な、暴君? 違うな、王様? 俺様? 冴島様って感じ? そういうの想像してたから、思ってたのとはちょっと違った。さすがだよ」 「なんなのそれ、褒めてるのか(けな)してるのかわかんないな。威圧的な暴君って、パワハラじゃん、そんなわけないでしょ」
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