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芙美に、それおかしいと笑われて、それもそうかと思う。でも違うの、褒めてるの。
「私もこの数年で、それなりに経験して成長したつもりでいたけど、冴島君はもっと先の先の方まで行っちゃってるんだわ」
「まあ、たしかに昔より少し丸くなったかもね、それは感じるわ。同期の星☆ですもの、頑張ってもらいたい」
ブレないな、あの人は。少し話すようにはなったけど、やっぱり遠い。
*
「──ウタ、ところでお父さんの具合大丈夫だったの?」
「ああっ、そうだった、ご迷惑おかけしました。もう全然平気、まだあまり動けないけどピンピンしてる。金曜日ほんとごめんね」
先週の金曜、芙美や田中君が企画してくれた同期の集まりがあったのだが、残念ながら私は参加できなかった。
そう、例の〝冴島君を囲む会〟だ。
私も行くつもりでいたのだが、当日急遽キャンセルすることになってしまった。
理由が理由で仕方がないけれど、久しぶりで楽しみにしていたのに。
その日、昼を過ぎたくらいから、私の個人用の携帯に実家の母から何度も着信があり、なかなか繫がらないからと、仕事用にまでシャンシャン電話が来はじめた。
すぐに連絡を取ってみれば、何のことはない、父が階段を踏み外し四、五段程落下し、足の骨を折る大怪我で直ぐに手術をしたという内容だった。相当大騒ぎだったようだが、それにしたって着信15。尋常じゃない。
何ごとかと心臓がバクバクするから、止めて欲しい。
気弱になった父が、娘会いたさに『今すぐ詩に連絡をしてくれ』と言ったらしい。お、大袈裟だよ! でもたしかに、検査以外では入院などしたことのない人だから、相当落ち込んだのだと思う。
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