3.つまりはそういう事

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* 「失礼しまーす、常務、入山さんをお連れしました」 「ああ、どうもどうも、わざわざお呼び立てしてすみませんね」 「いえいえ、いつもお世話になります常務……え?」  草埜常務と共にそこに居たのは、私が全く想像していなかった、あの人だ。 「今ちょうど、冴島君が来てくれてね、ああそうだ入山さんもまだ帰っていないはずだと思って」 「はい、ちょうど終わったところです。……ええと、冴島さんはどうして……?」  思い当たる事は何もない。頭の中にハテナマークが広がる。  彼は彼で、なぜか少しバツが悪そうで。 「今日は仕事の用で来たわけじゃないんだ。草埜常務に挨拶に寄ったら偶然、デザイン部の社員が来てるって言われて」 「ああ、そうだったんですね」  よくわからないが、笑顔で話を合わせた。 草埜常務はいつも通りにこにこと機嫌が良くて、こちらへどうぞと、冴島君の隣に座るよう促される。 「入山さんの話をしたらさ、冴島君と同期だって言うじゃない?」 「はい、そうなんです。同期で、こう見えて同い年なんですよ?」 「どういう意味だ」  あれ、なんか、仕事の時の冴島君と違う。 「ハハ、ちゃんと同じ位の年齢に見えるよ。二人共まだまだお若い。それなら君達が入社した年は、優秀な人材ばかりで当たり年だったんじゃない?」 「うわー常務、お世辞でも嬉しいです」 「いやお世辞じゃないですよ、ほんとに」  短い時間だが、コーヒーをいただきながら雑談をする。仕事の用事ではないと言っていたが、この二人はどういう関係だろう。  私はいつも通り仕事モードに整えた顔をして、常務に合わせながら話をするだけだが、気づくと隣に座る冴島君がリラックスした表情で、話しながら楽しそうに笑っている。  は!? 思わず、声が出そうになった。
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