3.つまりはそういう事

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 パッとしない気持ちを抱えたまま、階段を使い三階まで上る。私がのろのろと、残業確定のその日の雑務に取り掛かると、遠くに、戻ったばかりの冴島君の姿が見えた。  業務上、彼の帰りを待っていた社員たちが次々に冴島君の元へ寄り話し掛けていて、企画部の面々にいつの間にか囲まれている。 自然と目に入る、いつもの光景。 「ウタさん、お疲れさまです。雨すごかったですけど大丈夫でした?」 「うん、大丈夫でした。お疲れさまです」  車で、と話し出すと長くなるな。 「いろいろ業務連絡がありまして」 「あ、はい、お願いします」 「ええとですね、この商品のウェブサイトの商品写真なんですけど────」  小川さんからの報告・連絡を聞きながら、心ここにあらず、全然集中できていない。    遠くに見える彼らのことが、気になってしょうがない。  冴島君が軽快に誰かと話す姿、真剣な顔をしたり笑顔を見せたり、表情が変わる。  いつもなら自然と目を逸らすのに、今日はなぜか、目が離せない。  そして、ひどく寂しく感じる。  さっきまで、私が近くにいたのに。 「──ウタさん? 聞いてますか?」 「え?」  え? 私は今、何を思った?  理解不能な感情が突然ぶわっと噴き出して、すぐに処理することができない。  平常心、深呼吸、…………だめだ。 「ごめん、小川さん、ちょっとダメだ、五分ちょうだい。コーヒー飲んで目を覚まして来るから」 「えっ、今?」
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