この物語の......

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この物語の......

 この物語の残酷で滑稽な世界は万人が認識するこの現世と際限なく似ているが、何かが異なっている。  少年の妄想が構築した仮世なのかもしれない。それは体験した彼にしか分からない。  ありえない、起こるはずがない、馬鹿馬鹿しい。そう思えることが度々現実を襲う。  日本という国は広島と長崎に焦土の刻印を押された。神戸の地が激しく割れ、東北が激流に飲まれた。原発から漏れた放射性物質が罪なき土地を汚染した。  誰もがありえないと思った事だ。  起こってしまった後では、「そんなことは起こるはずもない馬鹿馬鹿しい」とは言えない。  そして誰もが「過ぎてしまったことは仕方ない」と諦める。  興味本位の伝道者は不実だ。真実の過酷が虚実の誇張によって薄まる。興味は一時に留まる。記憶の片隅にも置こうとしなくなる。そして風化する。
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