魔法少女じゃいられない

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 翻るドレスの裾を気にする暇もなく、無事に着地。  つま先から順繰りにずしんと衝撃が走る。  たしかに、これじゃ魔法少女でならした時分の半分以下だ。  あの頃なら、屋上から飛び降りたって、階段を一つ飛ばしたくらいにしか感じなかったはず。  なんて物思いを打ち切り、私はさっと辺りを見回した。  いきなり頭上からイカれた格好の女が降ってきたおかげで、通行人は目を丸くしている。  癪だけど、ベールを追加したカナンのチョイスに感謝すべきかもしれない。  私はドレスの埃を簡単に払って、さっさとこの場から退散しようとした。  ところへ、派手なスキール音を響かせながら、目の前の路肩に二台のミニバンが滑り込んできた。  どうせ的中するだろう嫌な予感に顔をしかめていると、案の定、車から吐き出されてきたのは、手に手に拳銃を携えた男たち。  私を無視してビルに乗り込んで行ってくれないかという淡い期待を砕いてやるとばかり、私をめがけて一斉に発砲してくる。  思わず身を竦めた私だったけれど、銃弾をこれでもかと浴びながら、強めの暴風雨にさらされたくらいの感触しかなかった。  取り敢えず慌てる必要がないことを確認してから、私は素早く考えを巡らせた。  選択肢その一。  さっさと逃げる。  身体強化の度合いにもよるけど、路地を上手く使えば逃げきれなくはないと思う。  ただし、不安要素もある。  変身がいつまで持つか、という点。  魔法少女だった頃、魔力を使い果たして変身が解けたことは一度しかないし、それも一昼夜ぶっ続けで戦い通しの結果だった。  けれど、今がどうかはさっぱり不明。  もし逃亡の最中に時間切れになったりしたら、待ち受けるのはほぼ確実な死だ。  なので選択肢その二。  さっさと片付けて帰る。
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