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ふわりと夜風を運んだカーテンの向こうに空を見上げて笑い合う、制服姿の私たちが重なる。
天文部に憧れて、日が落ちたばかりの校舎に忍び込んだ青春の一日があった。今夜の空気はよく似ている。
一瞬の迷いで伝えられなかった「もう少し」を口にしていたら――。
毛布を肩に掛け直す。晴れている冬の日は部屋を暗くして、布団に丸まって空を眺めるのが好きだ。誰にも邪魔されたくない、幸せな時間。
そんなひとときにスマホが光る。うっかりしてた。電源を切るのを忘れていた。舌打ちをして画面を見る。きゅっと目を細めるとだんだん目が慣れてくる。メッセージの相手はまさしく、青春の中にいた片割れだった。
話がある、とあった。仕方ないな、と絵文字も入れずに返事をすると「8日16時」と返ってきた。
スマホを閉じると先ほどよりも暗い夜空が現れる。星が戻るまで時間がかかるのに、私は不思議なくらい気分がよかった。
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